過敏性腸症候群(IBS)とは、主にストレスが要因となって、便秘または下痢をくりかえす病気です。IBSには「下痢型IBS」、「便秘型IBS」、「混合型IBS」と、 そのいずれでもない「そのほか」の4タイプがあり、それぞれ便の形状によって分類されます。
- 下痢型IBS
「泥状便・水様便」が多い。下痢症状は男性に多い。
- 便秘型IBS
「硬い便・コロコロ便」が多い。便秘症状は女性に多い。
- 混合型IBS
「泥状便・水様便」になったり、「硬い便・コロコロ便」になったりする。
- そのほか
どれにもあてはまらない。
便秘型IBS
「便秘型IBS」は、便秘症状が多く出るIBSのタイプです。
腹痛や腹部不快感がくりかえし出る、その症状によって排便回数や便の形状が変化する、排便によってお腹の症状が軽減するといったことなどが、IBSであるかどうかの目安になります。
一般的な慢性の便秘(機能性便秘)と便秘型IBSには重なる症状も多く、はっきりと区別することが難しい場合もあります。
一般的な便秘が高齢になるほど増加するのに対し、IBSは30代以下の若い年齢層に多くみられる傾向があり、高齢でも60代以上の男性では2.1%、女性では4.2%が便秘型IBSにあてはまると推定されています※
下痢型IBS
下痢型IBSは、くりかえす下痢・腹痛。下痢型のIBS(過敏性腸症候群)という病気といわれています。
緊張する場面、通勤・通学の途中や、試験の前に、大事な会議の前に、旅行先で、急におなかが痛くなりトイレに駆け込む、慌ててトイレを探す。
IBS(過敏性腸症候群)は、主ににストレスに起因して、下痢や便秘を慢性的にくりかえす疾患です。
大腸がんや潰瘍性大腸炎などは血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められますが、IBSは、検査でそうした異常はないことが確認されたうえで、症状が続く場合に診断されます。
過敏性腸症候群は、日本人のおよそ7人に1人がIBSに当てはまると推定されており、30代より若い年代に比較的多くみられる傾向があります。重症の場合は、トイレの問題で学校や会社に行けなくなったり外出を控えるようになったりするなど、生活の質を低下させることが問題になっています。
下痢の原因
下痢は、腸の運動が過剰になり、消化物が速く通過したり、腸粘膜からの分泌が増えたりすると、消化物が腸で水分を十分に吸収できなくなり、水分量の多い便が排泄される状態です。
下痢型IBSが単純な下痢と大きく違うのは、おもな原因がストレスであることと、
- 腹痛やおなかの張り
- おなかがなにか気持ち悪い
- おなかが鳴る
といった腹部症状をともなうことです。
また、排便によってその症状が軽減することもIBSであるかどうかを見極める目安になります。
IBSにより、不眠や不安・抑うつなどの症状が出る方もいます。
ストレスとIBS
腸は、神経によって脳とつながっています。そして、脳が不安やストレス(必ずしも自覚できるとは限りません)を感じると、その信号が腸に伝わって腸の運動に影響を与えることがわかっています。
IBSの患者さんでは、この信号が伝わりやすくなっているため、腸が過剰に反応してしまうのです。このとき腸では、「セロトニン」という神経伝達物質が腸の粘膜から分泌されます。
セロトニンは、不足するとネガティブな思考になるため、うつ症状と関連してイメージする人が多いかもしれません。しかし実は、体内のセロトニンのうち、脳などの中枢神経に存在しているのはわずか1~2%程度で、残りの約90%は腸内に存在しているのです。セロトニンが「セロトニン受容体と結合すると、腸の運動が異常をきたし、下痢や腹部症状を引き起こすのです。
また、不安やストレスを感じた時、まずは、自律神経のバランスが乱れます。人は、ストレスを感じた時、自律神経のうち、興奮する作用のある交感神経が過剰に反応してしまいます。一方、腸は、自律神経のうち、リラックスする作用のある副交感神経が支配しています。そのため、交感神経の過剰興奮によって腸の動きに異常が生じてしまいます。
鍼灸治療の一番得意としている分野は、自律神経のバランスを整えること。つまり、交感神経の過剰興奮を鎮めて、副交感神経の働きを正常にするための誘導をしてくれます。
鍼灸治療は、便秘や下痢、腹痛、憂うつ感など不快な症状そのものにすばやく対処することができ、かつ、根本的に自律神経のバランスを整えることで過敏性腸症候群に対して改善させることができます。