女子胞・胞宮
東洋医学では、子宮のことを「女子胞」、「胞宮」と呼んでいます。
女子胞は、五臓六腑と異なり、その機能においては臓腑との機能を合わせ持つ特殊な器官で「奇恒の腑」として考えられてきました。それは、女子胞が、月経をめぐらすといった腑としての機能を持ちながらも、胎児を宿し育てる機能、言い換えると「臓」としての機能を合わせ持つからです。
女子胞は、臓腑および経脈と密接に関係し、その生理機能、栄養状態が調整されています。臓腑では、腎・肝・脾胃が、経脈では任脈と衝脈と呼ばれるものが密接に関係しています。
東洋医学からみた更年期障害
東洋医学では、更年期障害のことを「経断前後症」、「絶経前後症」と呼んでいます。
中国最古の医学書、「黄帝内経」では、女性は49歳前後になると女性ホルモンが衰退し、任脈と衝脈に血を注ぐことができなくなり閉経するとされています。そのため、更年期障害とは、基本的に腎の病と考えられています。
代表的な病状 ①腎陰虚
更年期障害に代表する「めまい、耳鳴り、のぼせ、汗、ノドの渇き」の症状は、東洋医学では、腎陰虚と呼びます。
腎陰虚がひどくなると、肝陰を招き、肝陽上亢となって「動悸、怒りっぽくなる」などの症状があらわれます。
代表的な病状 ②腎陽虚
もう一つの東洋医学的な更年期障害では、「顔面晄白(白くて光沢がない状態)、精神不安、寒がり、手足の冷え」などの症状があらわれ、東洋医学では、腎陽虚と呼んでいます。
鍼灸治療
当院での更年期障害に対する鍼灸治療は、まず患者さんから今までの治療状況、症状、生理周期等、関係することをうかがいます。
女性の体はデリケートです。更年期といわれている時期には、女性ホルモンのバランスが変化するため、状況を確認する「問診」をとても大切に考えています。
問診後は、実際にどのような状態なのか、脈を診る等をおこなうことで気になる症状や、生理周期の変化、乱れも読み取ることができるため確認します。
問診と検査等の後は、ベッドに横になってリラックスしていただいた状態で鍼灸治療をおこないます。
鍼は髪の毛と同じくらいの太さ0.1mmほど、お灸は、火が直接肌に触れないものを使用していますので、火傷やお灸の痕が残る心配を極力減らします。
お灸にはリラックス効果だけでなく、血行の促進や抵抗力を高めて体を強くしてくれるといった様々な作用があります。また、鍼治療の後にお灸をすることで、治療効果が持続する作用もあります。
更年期障害の場合、生理周期の中で、治療方法が変化します。それは、女性の体質によって、また現状によって女性ホルモンの優先順位が変わるからです。